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『和モダン』Vol.3 

2016年02月18日

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・守谷の家

・茨城県守谷市

 

佇まい再考―良い家とは何か?

 

沖縄・伊是名島の銘苅家は、もう一度「佇まい」について考え直したいと思わせる魅力があった。そんな佇まいを考えながら設計したのが、「守谷の家」。見えないものまできちんと考えた設計は、かならず「佇まい」に表れるのではないか、と考えている。

 

沖縄・伊是名島の銘苅家の佇まい

 

3年ぶりに、沖縄の伊是名島へ出かけた。

沖縄の北部、美ら海水族館のちょっと先の港からフェリーで1時間ほどの場所にある。23年前に訪れた時はフクギという大木に集落ごとおおわれた防風林が残る、昔ながらの集落が美しかった。

その風景が残っているかどうか見届けたかったことと、銘苅家という王家ゆかりの民家をまた訪れたくなったからである。

長い年月の間に集落を囲む防風林は姿を消していたが、銘苅家は昔のままにあった。今回もその簡素かつ素朴で、品のある佇まいに再び惹きつけられた。この「心地よい佇まい」はどこから来るのだろう?と実測をしてみた。低く抑え込まれた軒の高さに美を読み取る。

建築はこうありたい、「佇まい」についてもう一度考え直したいと素直に思わせるだけの魅力があった。

先日ハウスメーカーの商品化住宅が立ち並ぶ分譲地に、1軒、住宅を設計した。「守谷の家」である。施主は地元で工務店を営むご主人を含めて家族3人と犬。仕事柄、打ち合わせ室を持つ。

敷地目いっぱいに立ち並ぶ住宅地の中に、控えめな小振りの家を考えた。銘苅家のような「佇まい」に少しでも近づけるように、高さをグッと抑え、平面も動線に沿って居場所を配し、面積をギュッと絞り、まるで一般的な家を縮小コピーしたかのような「佇まい」となった。

「佇まい」は英語で「atomosphere」、雰囲気、大気、空気、惑星を包むガス帯のことでもあるらしい。「良い佇まい」は建築、環境、設備、素材などの様々な要素のバランスの良さから醸し出され、創り手(設計者、施主を含む)の「良い意志」が表出するのだと思う。住まいを包み込むオーラのように「良い佇まい」はその地の空気となって建築を包み込む。

いい家とは「佇まい」で分かる…今はそんな気がする。惑星を包む大気のような…そんな空気を設計していきたいと思う。

 

見えないものまできちんとデザインする

 

これからの住宅はいかに環境に寄与できるか?が重要になってくる。

設備を付加する事が環境設計ではなく、無駄に大きな家に住まない事、必要な大きさの小さな家を丁寧に設計すること、見えないものもデザインする(空気、熱、手触り…)が大事なのではないか?と考えている。

「佇まい」という日本の概念にはバランスの良い、周辺環境によい影響を与えるチカラがあると思う。そのような、控えめだが品の良いオーラを醸し出す普通の住宅がエコロジー建築の理想ではないか?それが日本らしい住まいではないか?いい家といえるのではないか?と感じるようになってきた。

「守谷の家」はハイテクとローテクをうまくバランスさせた住まいでありたいと考えた。断熱材はセルロースファイバーを吹き込んでいる。高い断熱性能、遮音性、防火性、湿気を排出する効果がある。内外の仕上げは火山灰を利用した壁で、調質・消臭効果に優れ、化学物質を使用しない、100%自然素材で仕上げている。

フルオープンできるリビングの引き込み戸、日除けと目隠しを兼ねた網付きのガラリ戸、断熱に効果のある和紙障子など木製建具の多様な構成で、外部との制御をおこなう。

暮らす人の感覚で外部と応答し、心地よさを自分で作り出せる。この住まいの設備設計の特徴はハイテクとローテクをうまくバランスさせていることにある。ハイテクの設備として、この家は燃料電池を搭載している。次世代のシステムとしてメーカーの協力を得て、モニターとして搭載している。お湯と電気を同時に、この家でつくり、送電ロスを減らし、ライフスタイルに合わせたエネルギーをつくり出している。

また、空気集熱式ソーラーシステムも搭載し、冬に軒先から新鮮空気を取り込み、屋根で暖め、床暖房を可能にする。晴れていないときは、補助暖房が自動的に作動する。夏には夜間放射冷却現象を利用して、屋根で空気を冷やして、涼風を取り入れる。このシステムだけでこの家の必要な暖房エネルギーの40%をカバーできる。単純なシステムではあるが、環境や天気と応答した日本の情緒を感じさせる、日本生まれのソーラーシステムだ。

燃料電池やソーラーシステムのような機械設備だけでなく、住まいての強い要望で薪ストーブを設置した。原始的な暖房システムともいえるが、住まい手が直に操作をする楽しみとしての装置は人間らしい暮らしに欠かせないものであろう。炎が与えてくれるものは暖かさだけではなく、薪の爆ぜる音、香りなど、ハイテク設備にはないものである。

いい設計とはこのような設備を無理なく、スムースに融合させることだと思う。見えない空気や熱、音や手触り、香りなどがきちんとデザインされて、控えめに表現されていること。

見えないものをきちんと考えた設計は、その「良い意志」が必ず「佇まい」に表れるのではないか?いい住宅とはそのようなものではないか?と考えている。

 

 

 

 

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