『マイホームプラス』2009年SUMMER
2016年02月18日
・小木津の家
・茨城県日立市
シンプルでゆったり
家族が憩う
吹抜けのリビング
「小さい家」とは思わせない
広がりを感じさせる間取り
ご主人は古民家に憧れ、奥様はモダン好みだったという中野さん。モダンでありつつ素材感豊かで、風土に寄り添う暮らし方を志向する伊礼智さんの設計には、夫妻のどちらもが納得し、設計を依頼することになりました。
中野邸では、どこにいても爽やかな風が吹き渡ります。ワンルームのLDKはゆったりとして、自然豊かな周辺環境と同じ大らかさがあります。カーポートを除く延床面積は約38坪。茨城県という地域性で周りに40坪を切る家はほとんどなく、「小さい家だと思った」と奥様は言います。「地元の感覚で和室は最低でも6畳、できれば8畳にとお願いしたんですが、伊礼さんに『四畳半で大丈夫』と言われて。住んでみたら本当でした」(奥様)。伊礼さんの経験では、和室は実際にはあまり使われず、小さくてすむことがほとんどなのだそう。「それならその分の面積を、外物置や納戸にまわしたほうが、生活が豊かになるのではないでしょうか」(伊礼さん)
「狭さはまったく感じないし、逆に広すぎるくらい。人に30坪台だといっても信じてもらえないんです。人に30坪台といっても信じてもらえないんです」と笑う奥様。コンパクトでも広がりをかんじられるような伊礼さんが心がけたことは、余計な間仕切りをつくらないこと、廊下などの無駄な空間をなくすこと、回れる動線をつくることなど。全体に引き締まった間取りにして建物の規模を抑えれば、建築費もスリムになります。また、水まわりを一カ所にまとめることも工事費圧縮に有効なうえ、動線も短くなりシンプルになります。
そうした工夫の一方で、パッシブソーラーシステムには投資がなされました。屋根面に受けた太陽熱で空気を温め循環する床暖房には、中野邸のような間仕切りの少ない一体空間が理想的。夏季には夜間の放射冷却を利用した冷房も可能なタイプを採用。一年を通して快適だと喜ばれています。